●プロローグ
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《 今夜10時に 誰かが死ぬ 》
大財閥・八神家の館に届けられた一通の不吉な予告状。
探偵キサラギは、この謎を調査して殺人予告を阻止するため、助手のミハルと共に山中の洋館へと招待された。
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いわし質問を使った即興劇です。以下の設定を踏まえてキャラクターになったつもりで回答してください。
・ルール/キャラクター設定などはこちらを参照してください。→http://d.hatena.ne.jp/castle/20061031/p1
この質問は、lionfanさんのhttp://q.hatena.ne.jp/1161700535企画により立てられました。ありがとうございます。
メイドの詩織は我々を呼んだ当事者だ。容疑者から外してもいいだろう。
警護の奥坂竜二には動機がないし、利益を得る立場でもない。
次に怪しいのは西ノ宮武士だ。八神夕南の婚約者であり、いずれ結婚すれば、彼女と共に遺産を受け継ぐ事が出来る。
先ず容疑者の一人目は娘の八神夕南だ。母親が死ねば莫大な遺産が入る。最も利益を得る者を疑え、という原則では一番怪しい。
残念ながら殺人は阻止できなかった。しかし、犯人は絶対にこの屋敷の中に居る筈だ。必ず捕まえてみせる。
詩織が口を開いた。
「待って下さい。彼には死者の囁きを聞く特殊な能力があるのです」
と言った。
竜ニが足を一歩踏み出した。
「私が・・・」
と言いかけた所へ
武士は苛立たしげに言った。
「一体何をしているんだ。狂っているのか」
死体の傍に座る探偵の姿は奇怪の一言であった。
――それは、大きな振動となって聞こえてきた。
「し……き……けて」
必死な様子で死体から何かが伝わってくる。振動する頭蓋に阻まれて、ほとんどノイズのようにしか聞こえない。キサラギは必死に聞き取ろうとしたが、暗闇に阻まれるかのように、その音はかき消えていった。
だめだ。
キサラギはまぶたを見開いた。眼前には、ミハルのきょとんとした顔があった。
「なに震えてたの? あ、キサもしかして怖い?」
やっと頭蓋の振動が止まると、キサラギはミハルを放っておいて、ゆっくりと立ち上がった。そして、暗い面持ちのままうつむき、おびえる夕南に対して、何事もなかったかのようにこういった。
「夕南さん、申し訳ないが今すぐに、この家に関わっている人間を全て呼んでくれ」
夕南が静かにうなずき、その場から立ち去ろうとした瞬間、キサラギを最初に押しとどめた鑑識が素早く割って入った。
「困ります、この現場は立ち入り禁止です!」
この鑑識はおそらくこの現場の責任者なのだろう。キサラギは鑑識の胸をノックでもするかのように叩くと、
「なにもここに呼ぶとは言っていないだろ」
と言った。鑑識はそれを聞いて、またしても引き下がらざる得なかった。
屋敷の大理石の廊下はいつも手入れが行き届いていて、やたらに高い天井の光を映し出している。すこし先には豪勢な琥珀色の階段があり、それは左右に配置され、キサラギ達を待ちかまえているかのようだった。
キサラギは先ほどのやりとりから、すぐに全員を呼ぶのを一端保留にし、夕南に紹介されたメイド、詩織(しおり)に別室を案内してくれるように頼んだ。詩織は先頭に立って、キサラギとミハルを各所に案内し、説明して回る。簡単に言うと、屋敷の構造はこうだ。
一階は広いホテルのロビーのような空間があり、その中央には大理石の置物。ホールから続くいくつもの廊下の側面には、メイド達の寝室や、やたらに広い食堂、八神麗奈の書斎、客間などがあった。
二階に至る階段は正面の二箇所しかなく、そこを通らない限りは二階へは到達できない。だが、先ほど外から屋敷を拝見した限りでは、ベランダに何かを引っかけて上がる、あるいは、はしごなりを使って上がるのは十分に可能である。そう考えると、庭師のセンも一応頭の片隅に置いておくべきだろう。
階段を上がりきった正面に巨大なベランダが見えた。二階は八神麗奈の広大な、と言っても言い過ぎではない、寝付きの悪そうな寝室と、趣味の本を図書館並みに集めた部屋があった。あとは小さな小部屋がぽつぽつと点在した。小部屋はおそらく客室用だろうが、見せつけるだけ見せつけておいて、客には貧相な小部屋に泊まらせるとは、殺される理由も何となく伺えるというものだ。
「すまない、もう案内はいい、全員を招集できる場所を提供してくれ。できるだけ――そうだな、玄関から離れたところがいい」
それでは、と詩織は言い、二階の一番突き当たりにある小部屋を案内してくれた。詩織はお辞儀をして、重厚な扉を両手で閉めた。やがて、か細い腕が見えなくなる頃、キサラギは小部屋の窓辺に座り、まぶたを閉じた。
「さあ、おいで。犯人君」
キサラギの読みは当たった。やがて、遠くからいくつもの会話が聞こえてくる。屋敷の入り口へと向かって歩きながら、その声達は、キサラギに有益な情報をもたらすとも知らずに。
「ああ、そう言うことらしいな」
野太い男の声が聞こえる。
「昨日、奥様は普段お召し上がりにならないお食事をされていたとか」
今度は、とても綺麗な男の声。少しナルシスト風のしゃべり口調だ。
お召し上がりにならない食事。
それが、なぜか耳に残った。
「奥様なんてよせ。あの女には安月給で警備を任されていたんだ」
やはり、人望は厚くなかったようだ。キサラギはさらに耳を澄ませた。
わずかににじんだ血を見たミハルは、顔をしかめて、鼻をつまんだ。
「ねえ~、キサ~、この変なんか臭いよ」
ミハルは全く場の空気を読もうとしない。キサラギにとって、彼女はまるでペットのようなものであった。それもそのはずだ。ミハルは勝手に事務所に押しかけて、キサラギの“助手ごっこ”を始めてしまったのだから。
「“キサ”はやめろ」
キサラギは胸元から白い手袋を取り出すと、死体を凝視したまま、ぎこちなく装着してゆく。
突然、八神夕南(やがみ ゆな)が震える唇を開いた。
「母が……」
鑑識の連中が一斉に振り向き、それにつられてミハルも振り向く。
キサラギだけが死体にご執心だ。
「母が言っていました。この館は、先代の血で縛られていると」
場の空気が静まりかえり、まるで彫刻のようにおとなしかったカラスが窓の外で不吉な産声を上げた。洋館の冷気は蝋人形の様相を呈する死体を中心にして、広がっているかのようだった。
が、それでも空気を読めないミハルは突然言った。
「で、血が何よ」
キサラギはこの助手もどきの度胸だけは認めている。単に鈍いだけだとは思うが。キサラギは手袋をすっかり装着し終えると、内出血が赤く腫れるその場所へ、手を伸ばそうとした。が、突如、夕南が叫んだ。
「その血に!」
右手を中空に力なく差し出し、夕南は足下もおぼつかないまま、続けた。
「その血に触れてはいけません、その血に触れては……」
場が凍り付くのをよそに、キサラギは夕南を見上げた。それではどうすればいいのか。キサラギは姿勢を崩すと、死体の傍にあぐらをかいて座り込んでしまった。
ミハルはつまらなそうに足をプラプラさせた。
この二人だけが周囲の光景から浮き上がっていた。
その時だった。キサラギの耳に、かすかな声が聞こえたような気がした。それはやがてうめきとなり、キサラギの頭蓋を揺さぶるほどになった。
死体は語る。
「とはよく言ったもんだな」
キサラギは静かに目を閉じ、耳を澄まし始めた。
それはサック・マークと呼ばれるものであった。何者かが口で強く吸った後に出来る、内出血の痣。それが麗菜の素足についている。
しかもそれは一つではなかった。足の付け根に近い部分に幾つもついている。
死体を俯瞰し、キサラギはうめいた。八神麗奈の死体は心臓を一突きにされ、即死していた。静かな洋館の窓の外には、漆黒のカラスが声さえ出さずに枝に佇んでいる。暗雲はたれ込め、今にも雨が降り出しそうだった。洋館の中は豪勢な作りで、ここへ来る途中、大理石の廊下や、石膏で出来た古い彫刻などがキサラギ達を出迎えた。そんな中、この豪勢な屋敷に似つかわしくない、白目を向いた死体があった。
鑑識の男達がブラシを使って指紋を浮きだたせている。キサラギはそんな中、現場に近づくと、死体の周辺に張られたロープを跨いで死体に近づいた。
「すまない、どいてくれ」
数名が思わず道を空けたが、気づいた鑑識の一人が怒鳴った。
「ちょっとあんた、邪魔しないでくれ」
鑑識がキサラギの肩を掴んで振り向かせようとする。キサラギはなにやら胸ポケットにしまっていたあるものを取り出すと、背を向けたままその鑑識の目の前に突きだした。
「あ……申し訳ありません、あなたでしたか」
鑑識官は申し訳なさそうに、おそるおそる手を引っ込めると、キサラギは“それ”を胸ポケットにしまい込んで、死体の前にしゃがみ込んだ。
「ミハル、こいつを見て気づくことはないか」
キサラギは刺された場所とは全く関係のない場所を指さした。死体のスカートがはだけていて、真っ白な素足を晒していた。そこに何かの跡のようなものが見える。
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※こんな感じでいいのでしょうか? 情景描写はNGですか? コメントで質問出来ればベストなんですが……。
【10月31日午後10時04分。女主人・八神麗奈が殺害された死体が発見されました。】
凶器は広間に飾られたナイフで心臓を一突き。
一瞬の停電の間に行われた凶行でした。
(殺人鬼の内面描写、キサラギが聴くことのできる囁きなどは、こちらのツリーにお願いします)
《 今夜10時に 誰かが死ぬ 》
大財閥・八神家の館に届けられた一通の不吉な予告状。
探偵キサラギは、この謎を調査して殺人予告を阻止するため、助手のミハルと共に山中の洋館へと招待された。
そして、惨劇の幕は開く・・・・・・。
【10月31日午後9時25分。キサラギとミハル、八神家に遅刻しながらも到着。】
ミハルも言い添えた。
「そうだよ。先生は凄いんだからね」