そこで質問ですが、レイアウトシステムというものがどういうものか、レイアウトシステムを導入することでどのようなメリットがあるのかを教えてください。
レイアウトシステムの創始者
まず、レイアウトシステムという手法を最初に作ったのは高畑勲と宮崎駿だそうで、レイアウトシステムを使って作成された最初のアニメが「アルプスの少女ハイジ」との事。
押井監督は「天使のたまご」製作のおりに、美術の小林七郎氏からレイアウトの見方を教わったそうです。
http://www.yk.rim.or.jp/~rst/rabo/takahata/ensyutsu.html
●「アルプスの少女ハイジ」の場合
まず、ヨハンナ・スピリ原作のテレビシリーズ初演出(監督)作品「アルプスの少女ハイジ」を見てみたい。
この作品は、一話に六〇〇〇枚もの動画を使用、テレビアニメで初めてロケハンを敢行し、レイアウトシステムを敷くなど革新的野心作であった。特に、キャラクターデザイン・作画監督の小田部羊一氏、場面設定・画面構成の宮崎駿氏、美術監督の井岡雅宏氏は、高畑監督と共に年間通じて全カットを担当するという驚異的な仕事ぶりであった。
http://www.k3.dion.ne.jp/~adelheid/mitaka.html
パンフレットの高畑氏のメッセージに、レイアウトを担当された宮崎氏の仕事の重要性について書かれていました。ハイジは、今では一般的になっているレイアウト・システムで作られた最初の作品。宮崎氏によって、映像の一カットの質が格段によくなり、全話にわたって質が均等に保たれるようになったということでしょうか。。それにしても、膨大な量のカットをこなされたわけです。。
http://www.yk.rim.or.jp/~h_okuda/wwf/w28_noda.htm
「いや押井原理主義なら知ってておかしくない! 確か『天使のたまご』の時に押井監督が美術の小林七郎さんからレイアウトの見方を習ったという記述がどっかにあったぞ。ちゃんと読みなさい」
レイアウトシステムとは
昔のアニメは「絵コンテ」というざっとした流れを描いたものを見ながら、直接アニメーターが動画を描いていましたが、レイアウトシステムとはその間に1クッション置いて「背景とキャラクターを配置した絵を描き、こう動かして欲しい」という指示を加えることです。
http://www.madhouse.co.jp/column/oginyan/oginyann_01_a.html
吉松
まず、原画マンが絵コンテを元に、レイアウト用紙(※写真参照)という紙にレイアウトを描きます。レイアウトとは、その場面に必要な背景を描いて、その上にキャラクターをどう配置してどう動かすかという情報を描きこんだもの。ようはカットの設計図だね。「背景原図」とも呼ばれます。次に、演出の人は、原画マンが描いたレイアウトは絵コンテ(注3)にあっているのか、絵コンテの意図はちゃんと盛り込まれているのかを、チェックします。チェックしたレイアウトに不備があるときは、原画さんに戻して直してもらったり作画監督に修正してもらいます。絵のうまい演出さんは自分で修正したりもするんですよ。
おぎにゃん
ためになるにゃん!
吉松
そして、演出さんがチェックしたレイアウトは作画監督にまわってきます。そうすると作画監督は、レイアウト用紙の上に修正用紙という色のついた紙(※写真参考)を乗せて、今度は作画を監督……つまり、画の統一感を出すために「ここはこうして欲しいな」ということを描いていくんですね。このとき、簡単にキャラを直したりもするんですよ。これを「レイアウト修正」と言い、原画マンはそれらの修正をもとに原画を起こしていきます。
おぎにゃん
つまり、原画を描く前にレイアウトという段階があるのだにゃ!
吉松
そう。レイアウトの段階で、「こんな構図がいいな」「こんな風に動かしたいな」というプランを形にするんだね。
ちなみにヤフオクに「アルプスの少女ハイジ」のレイアウトが出品されていました。
http://page18.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/w19747907
http://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/d80394301
メリット
簡単に言えば、制作現場での参加人数が増えた為に全体の意思の疎通を図るためと、演出家の意図を的確に伝えるための指示書ということでしょうか?
これによって、演出意図を間違って作画する無駄がなくなり、また全体の流れの統一を図ることで作品の質の向上に繋がるようです。
http://www.madhouse.co.jp/column/oginyan/oginyann_01_a.html
アニメ仙人
吉松くんがこの業界に入ってきた頃は、アニメーターさんはレイアウトと原画を同時に仕上げて作画監督のチェックへ出していたのねん。けど、そのやり方には効率の悪い部分があったのよ。例えば、原画が5枚描いてあったとするでしょ。でも、そもそものレイアウトが、演出の意向と違っていたら、原画5枚とレイアウト1枚の両方を直さなくてはいけなかったのねん。それが最近、根本的な直しをしなくて済むように、レイアウト段階で演出家や作画監督といった人たちがチェックするようになったのねん。
おぎにゃん
じゃあなんで昔はそうしなかったのかにゃ?
吉松
昔は1本の作品に関わっている人数が非常に少なかったからだろうね。例えば、30分のTVアニメ1本分の原画を2、3人、多くても4、5人で作画していたんだね。その人数でチームになって制作するから勝手知ったる雰囲気というか、少人数で意思の疎通も取りやすかった。けど、今はもう勝手知ったるとかそういう……。作画に関わっている人数が恐ろしいことになっている作品もあるからね。
アニメ仙人
1クラス分の人数が作画、みたいなねん。
おぎにゃん
ほにゃー。すごい増え方だにゃぁ。
吉松
そういう部分もあって、今はレイアウト段階でチェックするシステムが必要なんですね。
3Dレイアウトシステム
『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』等では3Dレイアウトシステムを導入しているようです。
http://www.production-ig.co.jp/contents/works_sp/1590_/s08_/0025...
「今回全編を通して、3Dレイアウトシステムというのを組んでいて、これがクオリティアップに役立ちました。スケジュール的にもかなり助けられました。
3Dレイアウトとは、建物の中を先に3Dで組んでしまうものですが、極端にいえば、3Dさんと演出さんで大枠のレイアウトを決め込んで、作打ち(作画に関する打ち合わせ)に入る前にレイアウトが上がってるというものです。もちろん後から原画さんがブラッシュアップすることもありますが、全編を通してのクオリティアップにつながっていると思います。
また、総作画監督で後藤隆幸さんに立っていただけたことも大きいです。全編に渡って後藤さんの手が入っているので、かなり統一された絵になっていると思います」
演出、作画、動画と、1カット、1カットを大勢の手によって仕上げていくアニメ制作において、いかにそのカットに関わる人の間で意思の疎通が図れているかは、クオリティを維持していく上で大きい。本作の制作工程では、さらにライティングボードが導入された。
『METHODS 機動警察パトレイバー2 演出ノート』にも色々解説が載っているようです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%BC%E4%BA%95%E5%AE%88
アニメにおけるレイアウトシステムの重要性を訴え、大量のレイアウトを解説した『METHODS 機動警察パトレイバー2 演出ノート』を著している。
ありがとうございます。
大量の情報、素晴らしいです。早速読んでみます。