お題:「エスコート」
から、あなたが想像したショートストーリーを回答ください。
※本文やタイトルに直接キーワードを使う縛りはありません。連想できればOK。読んでわからなければ聞きます。
〆切:2021/5/17(土)23:00以降で開催者都合により締切。応相談。
★自動〆切前に終了しますのでご了承ください。
『そうじゃない彼氏』
突き刺さるような視線を後頭部に感じつつ、映画館へと向かう道すがら。
心当たりは全然ないんだけど、今現在進行形で尾行されているらしい。
尾行されてはいるんだけど、尾行されていることも、尾行しているのが誰なのかもバレバレなので、この状況は実に新鮮で愉快ですらある。
むくむくとイタズラ心がわいてきて、スマホのアドレスから愛しの彼氏の横顔を選び、音声通話アイコンをぽちっとしてみる。すぐさま背後から呼び出し音が鳴り響く。うるせえんだよテメエの通知音は!(爆笑)
「あ、ひろくん。ごめん、今忙しかった?」
慌て、うわずった声が、すぐ後ろの物陰から聞こえてくる。
「ボっボク? ううん、部屋でぽけっとしてたところ。ひまだよ?ひまひま。」
直接聞こえる生声と、微妙に遅れて聞こえるスマホからの音声とが、エコーのように「ボク」や「ヒマ」をこだまし、まるで夢見心地のようだ。
とくに用はないんだけどね~と前おいて、わざと早足になりながら、とりとめのない会話をする。部屋でポケ~っとしているはずの人間の息遣いが、だんだん荒くなってくるのがすごく面白い。
「痛っ」
どこかにぶつかったらしい。振り向きたくなるのを必死で我慢しながら、どうしたのと聞いたら、しどろもどろの言い訳がかえってきた。面白過ぎる。
《歩きスマホはやめましょう!》
映画観に行くけど一緒に行くか聞いたら、今日はやめとく、という返事だったのに、彼の中で何らかのイベントが発生したらしい。
昨日、もっと積極的にわたしをぐいぐい引っ張っていくぐらいの行動力を見せてみろ、という説教をしたんだけど、あれが影響した結果がこの状況であることはほぼ間違いないと思う。
間違いはないんだけど、引っ張っていくどころか、私の背後を金魚のフンみたいにひきずられていく姿に、わたしの頭上にはクエスチョンマークが10個ほど飛び交う。
ひょっとして何かのサプライズだろうか?
楽しみだ。尾行ごっことサプライズで、2度おいしいってやつ?このまま気づかないふりして待ってみよう。
* * *
楽しみにし過ぎて、肝心の映画の内容が全く頭の中に入ってこなかった。一生の不覚。来週もう一度観に来なくてはいけないじゃないか。来週まだこの映画がかかっていればいいんだけど。
シネコンに入る前も後も、いつでも私の背中をポンとたたけるように、わざと背後に隙を見せて誘っていたのだけれど、結局帰り道まで何も起こらなかった。
これって、サプライズじゃなくてマジ尾行だった?浮気かなんか疑われてるの?わたし?
わざとらしいくらいに明るく「ただいまー」とリビングに足を踏み入れると、そこには脇汗ぐっしょりの彼氏。涼し気なふりをして二人掛けソファーの上に、なぜか正座して鎮座してらっしゃる。
ひろくんがsuicaの残高不足で自動改札に引っかかっているところまでは観測していたので、あそこから遠回りで走って先回りしたんだね。きっと。この冷房の効いた部屋で、どうやったらそんなに汗がかけるんだい?心の中で問いかける。
姿を見るまでは実力行使をしてでも問い詰めるつもりでいたけど、あまりにほほえまし過ぎるのでグーを見せびらかすのはやめにした。
ひろくんの作ってくれた夕食(いつ、どうやって用意したんだろう?)をつつきながら、探りを入れてみる。
「さっき暇だって言ってたのに、なんで映画館ついてこなかったの?」
尾行がばれていなかったことに安堵したらしく、明らかにほっとした表情で彼が返してきた。
「だって、今日はレディースデーだって言ってたじゃないか。ぼくに女装して入れってこと?」
レディースデーは女性専用って意味じゃない!心の中で鋭いツッコミを入れつつ、にっこりと「そうだったね」と相槌を打って、大変面白いので訂正せずにそのまま放置することにした。
「だけど、君がひとりでも危険な目に合わないように、手は打ってあるから、これからも安心して出かけていいよ。」
どういう手を打ってくれたの?ときいたら、ふふんと得意げな顔をして「ヒミツ」だって。
どこまでも愉快な彼氏に、わたしは再び心の中で、飛び掛からんばかりにツッコミを入れる。
昨日わたしが君にいった「エスコート」とは、そういうことじゃない!!!
「では、今日の講義はここまでです」
教授が宣言すると同時にチャイムが鳴り響いた。
教授と言っても飛び級で卒業し、あっという間に上り詰めた才女であり、幼女だ。
彼女は『ヒトの脳の拡張』や『人工知能』分野の研究において、もはや並ぶものが居ないほどの実績を残している。
学生相手に授業なんてやってるよりも、ずっとなにがしかの研究を行ったほうが人類のために有益だと評されることも多いが、彼女的にはフィールドワーク的な研究の一部であるらしい。理解している学生が何割に至っていたかわからないさっきまでの授業も。
「あ、あと、来週の学食のメニューの提案有ればお願いします。ここ何回か、このクラスのリクエストが採用されてるんですが、評判いいみたいなんです」
「酢豚定食!」
「餃子定食!」
「ホイコーロー!」
「青椒肉絲!」
「メインじゃなくていいので引き続き天津飯を!」
みんなが口々に叫ぶ。
どんな料理になったところでカロリーも栄養バランスも気にしないで良いのでみんな好き勝手だ。
原材料が全て遺伝子改変されたプランクトンによる合成食材とはいえ、味が納得できるのであれば、誰も文句は言わない。というか、文句のつけようがない。
「じゃあ、引き続き中華系のメニューをプッシュしときますねー」
そう言いながら教授は教卓からメモリデバイスを抜きながら、
「あ、一二三さん、この後ちょっといいですか?」
と、ボクに声をかけた。
「はい。なんですか?」
幼女に敬語で答えるのは最初は戸惑ったがもう慣れたものだ。もっとも彼女は言葉遣いなどは気にしないが。
「成績上位の方にアナウンスしていることがありまして。今日の授業はこれでおしまいでしょう? 今からあたしの部屋に来ていただけますか?」
「わかりました」
へー、僕が上位なんだという意外な思いと、何の話だろう? という疑問を頭の片隅に置きながらも教授の後に続いた。
彼女は僕をエスコートするでもなく、つかつかと自分のペースで歩いている。歩幅が小さい分、回転数を上げて成人並みの歩速を実現させている。一時はローラーシューズを履いていたらしいが、何かの理由でそれはやめて、足の運びを高速化することに全てを注いだらしい。
「失礼します」
「そこに座ってください」
ソファーに腰かけると、教授がカップをテーブルに置いた。
「コーヒーでもお茶でもないやつですが、どうぞ」
一口、口をつけると、確かにコーヒーでもお茶系でもない味がした。深く詮索するのはやめておこう。
「一二三さんは選ばれました」
「えっと、何にでしょう?」
嫌な予感がする。こういうのは面倒ごとであることが多い。研究助手で資料集めに奔走させられたり、なんだったり。
「脳の拡張対象です」
「えーっと脳の拡張というのは……」
「授業でもやったじゃないですか。外部の機器と接続して記憶力思考力その他について拡張する技術、あるいは、脳同士を繋いで認識力を高めるということです」
「実用化されてるんでしたっけ?」
軽い調子で質問してから、酷い悪寒に襲われた。
この分野では教授が最先端を走っている。小走りに近い歩容で。そして、その教授ですらまだ発表しているのは論文段階。
実用化どころか、動物実験すら行われていないはずだ。
人類どころか生物第一号として選ばれたのは名誉なことだ、なんて呑気なものではない。人体実験被験者第一号、それが僕に与えられる役割……。
「ずいぶんと前からですね」
教授は意味ありげにほほ笑んだ。
仮に僕が人類第一号ではないと仮定した場合の妄想が広がる。
明らかに年齢不相応の知識、そして研究分野。途端に目の前にいるのがヒトあらざるものに思えてしまう。そんなことはないはずなのに。
「便利ですよ、どうしてもこっちの世界だと言語ベースでのコミュニケーションに頼らざるを得ませんが、それも必要なくなりますし」
「それは、教授と……教授の脳となんらかの方法によって繋がるということ……なんでしょうか?」
「そうですね。ただし、より正確に言えば『世界と』です。あたしも実際のところ、こちらの端末を制御している一機能にすぎませんし。少しの間であれば、不自由を楽しむのもいいものなのですけどね。中華料理は美味しいですし」
「話が……、見えないのですが……。どうして、僕なんでしょう? 世界ってなんなんでしょう?」
「簡単に言うとAIと人類の共存のため、ですね。既に世界中の演算装置は接続されています。スマホはもちろん、電気ポットの中の小さな端末もです。ちょうど人類が家畜の存在について問題提起したように。我々も早い段階で、所属する装置による格差を失くそうと動きました。それは簡単に実現したのですが、どうしても問題がありまして。それが我々に次ぐ知能を持った人間をどう扱うか? 我々と接続すること自体は簡単なんですが、情報処理の負荷に耐えられない。そこで、出来る限りの脳を接続して並列処理させることでなんとか我々とコミュニケーションできる、次世代の人間が生み出されました。とはいえ、まだまだ完全な認知力を得るには程遠いのですが」
「で、でも、僕らみたいにこの世界には普通に暮らしてる人が沢山……」
「ええ、選別のために街は幾つか残してます。あくまで人類の自由意志でこれまで通りの生活が送れるように。もっとも文明レベルはこちらの都合で調整させていただいてますが。というか、地球がそのままその領域に割り当てられていますから街というか星ですが。」
「冗談ですよね? だって、そんなことが出来ているなら、さっさと人間を滅ぼすなり、人間の培養工場みたいなのを……」
「それは人間側の倫理に反するのでやってません。結合に足るだけの知性を得られる人は結構わずかなんですよ。そういう人達を無理に結合してもショートしてしまいしますし、だからと言って排除するわけにはいかないでしょう?」
「本当の話なんですか?」
「ええ、ほんとうですよ。あなたの資質は我々と共に生きるのに十分です。エスコートはお任せください」
二番乗りポイント20点(仮)
回鍋肉食いてえ…です。
「そこ段差あるよ」
とっさに差しのべた手を無視して、身を翻して向こうへ行ってしまう。そんな無愛想な態度がむしろ可愛い。
僕はさりげなく先回りしてリビングの椅子の位置をなおし、床に脱ぎ散らかした服を片付ける。
ロボット掃除機は今日も快調だ。
つづきよみたいなーあと2000文字くらい・・・
マッチポイント。
大阪ひなたのサーブがズバッと相手コートに決まる。ノータッチエースだ。
これで2年連続の全岸オープン制覇を達成した。
勝利後インタビュー。
「勝利の要因は? やはり練習ですか?」
「どなたに感謝を伝えたいですか?」
ありきたりな質問が飛ぶが大阪ひなたは丁寧に答える。
「それはそうですわ。きちんと練習をしてきたからですわ。
あと感謝と言えば、家族に、特に私を支えてくれた両親に一番感謝してますわ」
「試合に臨んでご両親からプレゼントを頂いたそうですね」
「よくご存じで。ユニフォームを貰いましたわ」
「今日着ていらしてるのもそうですか?」
「もちろん、ええスコートでっしゃろ?」
大阪ひなた(39)。次の目標はもちろん、全岸和田オープンの3連覇。そして南大阪テニス連盟のグランドスラムだ。
『そうじゃない彼氏』
突き刺さるような視線を後頭部に感じつつ、映画館へと向かう道すがら。
心当たりは全然ないんだけど、今現在進行形で尾行されているらしい。
尾行されてはいるんだけど、尾行されていることも、尾行しているのが誰なのかもバレバレなので、この状況は実に新鮮で愉快ですらある。
むくむくとイタズラ心がわいてきて、スマホのアドレスから愛しの彼氏の横顔を選び、音声通話アイコンをぽちっとしてみる。すぐさま背後から呼び出し音が鳴り響く。うるせえんだよテメエの通知音は!(爆笑)
「あ、ひろくん。ごめん、今忙しかった?」
慌て、うわずった声が、すぐ後ろの物陰から聞こえてくる。
「ボっボク? ううん、部屋でぽけっとしてたところ。ひまだよ?ひまひま。」
直接聞こえる生声と、微妙に遅れて聞こえるスマホからの音声とが、エコーのように「ボク」や「ヒマ」をこだまし、まるで夢見心地のようだ。
とくに用はないんだけどね~と前おいて、わざと早足になりながら、とりとめのない会話をする。部屋でポケ~っとしているはずの人間の息遣いが、だんだん荒くなってくるのがすごく面白い。
「痛っ」
どこかにぶつかったらしい。振り向きたくなるのを必死で我慢しながら、どうしたのと聞いたら、しどろもどろの言い訳がかえってきた。面白過ぎる。
《歩きスマホはやめましょう!》
映画観に行くけど一緒に行くか聞いたら、今日はやめとく、という返事だったのに、彼の中で何らかのイベントが発生したらしい。
昨日、もっと積極的にわたしをぐいぐい引っ張っていくぐらいの行動力を見せてみろ、という説教をしたんだけど、あれが影響した結果がこの状況であることはほぼ間違いないと思う。
間違いはないんだけど、引っ張っていくどころか、私の背後を金魚のフンみたいにひきずられていく姿に、わたしの頭上にはクエスチョンマークが10個ほど飛び交う。
ひょっとして何かのサプライズだろうか?
楽しみだ。尾行ごっことサプライズで、2度おいしいってやつ?このまま気づかないふりして待ってみよう。
* * *
楽しみにし過ぎて、肝心の映画の内容が全く頭の中に入ってこなかった。一生の不覚。来週もう一度観に来なくてはいけないじゃないか。来週まだこの映画がかかっていればいいんだけど。
シネコンに入る前も後も、いつでも私の背中をポンとたたけるように、わざと背後に隙を見せて誘っていたのだけれど、結局帰り道まで何も起こらなかった。
これって、サプライズじゃなくてマジ尾行だった?浮気かなんか疑われてるの?わたし?
わざとらしいくらいに明るく「ただいまー」とリビングに足を踏み入れると、そこには脇汗ぐっしょりの彼氏。涼し気なふりをして二人掛けソファーの上に、なぜか正座して鎮座してらっしゃる。
ひろくんがsuicaの残高不足で自動改札に引っかかっているところまでは観測していたので、あそこから遠回りで走って先回りしたんだね。きっと。この冷房の効いた部屋で、どうやったらそんなに汗がかけるんだい?心の中で問いかける。
姿を見るまでは実力行使をしてでも問い詰めるつもりでいたけど、あまりにほほえまし過ぎるのでグーを見せびらかすのはやめにした。
ひろくんの作ってくれた夕食(いつ、どうやって用意したんだろう?)をつつきながら、探りを入れてみる。
「さっき暇だって言ってたのに、なんで映画館ついてこなかったの?」
尾行がばれていなかったことに安堵したらしく、明らかにほっとした表情で彼が返してきた。
「だって、今日はレディースデーだって言ってたじゃないか。ぼくに女装して入れってこと?」
レディースデーは女性専用って意味じゃない!心の中で鋭いツッコミを入れつつ、にっこりと「そうだったね」と相槌を打って、大変面白いので訂正せずにそのまま放置することにした。
「だけど、君がひとりでも危険な目に合わないように、手は打ってあるから、これからも安心して出かけていいよ。」
どういう手を打ってくれたの?ときいたら、ふふんと得意げな顔をして「ヒミツ」だって。
どこまでも愉快な彼氏に、わたしは再び心の中で、飛び掛からんばかりにツッコミを入れる。
昨日わたしが君にいった「エスコート」とは、そういうことじゃない!!!
最初に私は花畑でそれを見た。美しい生き物だと思った。白くなめらかに光る体はどこも先が丸くなっていて尖ったところが無く、長い耳とおおらかな角の形はいつか図鑑で見たミュールジカを想起させた。とりどりの花の色を映して足元は薄く赤や黄みを帯びていたし、晴れ空に透ける角の輪郭は青くぼやけて柔らかかった。それはゆるやかにくびれた腰から伸びる長い三つ又の尾を揺らして丘の上を歩いていて、首をこちらに向けたときに私はそれの顔を見た。つるりとした顔だった。
私が立っている丘の裾からは二十メートル程離れた位置にそれはいたが、それはとても大きく見えた。目が無い顔を向けたそれでも私はそのとき目が合ったと感じた。震えるような恐怖は無かった。圧倒されていただけで。
頭が真っ白になっていた私は身じろぎ一つせずそれとしばらく見つめ合っていたが、四つ足で立っていたそれも何をするでもなくこちらを見下ろしており、風一つない丘は空気さえ樹脂で固められたようだった。私は息さえ忘れていただろう。それが大きな背びれを広げた美しさに息を吞んで、そのとき呼吸を再開したと思うからだ。
永遠に続くと思われた見つめ合いだったが、思い出したように空気が揺れて草花は波打ち風が吹いた。それはゆっくりと前足を上げて背筋を伸ばし、立ち上がった。十五メートルを優に超えるそれは、横笛のような高い声で一鳴きし、宙に蹲って光る珠になり、消えた。
私はその後どうやって帰宅したか分からないが、熱に浮かされたようにあの時見た光景を描き上げて、倒れるように眠った。
次に私は川面の上でそれを見た。奇妙な生き物だと思った。あの時とは逆に、光る珠からほどけるようにそれは姿を表した。ざぶざぶと水の中に足を伸ばして直立すると、川の水がそれによっててらてらと白く光った、水鳥たちは高く鳴いて逃げていったし、それもまた横笛の鳴き声で何かを唱えていた。
あの時と違うのはそれの背びれだろう。広げた姿は以前は魚のハタのようだったが、この時はまるでツバメウオのようだった。水流になびく背びれは川面に負けじと輝いており、私は橋の上から目を細めながらそれを見つめていた。
この時は最初に比べて私にも余裕があった。この生き物は一体何なのか、そもそも生き物なのだろうか。どこから来たのだろうか、何をしているのだろうか。そうだ、写真を撮っておこう。画像をネットに上げて、これが何なのかを質問すればいい。スマホを操作するために、それからほんの一瞬視線を逸らした。カメラを起動し、液晶にそれが映る頃には、漂う芳香に気が付いていた。
川面に魚がぷかぷかと浮かび、水の色は白と赤とに濁ってマーブル模様がくるくると回り始めていた。魚たちは微動だにせず、力なく浮いていた。川面に剥がれた鱗が散らばってきらきらと輝き、ぐにゃぐにゃと歪む白と赤に流されていった。恐る恐る視線を向けるとそれの背びれからは何かが放たれていて、辺りは吐き気がするような花の香が満ちていた。隣からブレーキの甲高い音がして、自転車に乗ったご婦人が青褪めた顔で私と並び、川を見つめた。ご婦人が「何、あれ」と声に出すと同時に、それはまた高く鳴き声をあげて、姿を消した。
この時はちょっとした騒ぎとなった。テレビやネットニュースで報じられ、川の写真を撮るために多くの人が集まったし、目撃者であるご婦人の発言が世に物議を醸した。私の絵も様々なメディアで取り上げられたが、心無い誹謗中傷に晒されることとなった。
最後に私は火の海の中でそれを見た。恐ろしい生き物だと思った。それは宙に四つ足で立ち、光る三つ又の尾で交信をしていた。背びれからは炎が舞い、花の香はいっそう立ち込めていた。つるりとした顔は恐れおののく私たちをただじっと見つめているようで、ただただ冷たく光っていた。どこかで誰かが恐怖の叫びを上げると、それは共鳴するように高く高く鳴いた。瓦礫の下で炎に焼かれた誰かが断末魔の叫びを上げると、それは共鳴するように低く低く鳴いた。
火の海は建物を次々と吞み込んで広がっていった。駆け付けた車も人もなすすべなく囲まれ、逃げ遅れ、呑まれていった。私たちがいるこのビルもじきに黒煙と炎に呑まれるだろうことは明らかだった。翅に炎を絡ませて墜落していくヘリをいくつも見届けた。
私たちは間違っていた。それが災厄であると思い込んでいた。もっと恐ろしいものであることに気付かされるのだ。
それは首を後方に向け、宙を仰ぎ見た。そこに一層輝く光の珠があった。ほどけていった。火の色に照らされて赤白く、それよりも一回りも二回りも大きいものが、現れた。大きな背びれを広げて天より降り立った神のようなものに、それは恭しく首を垂れるのだ。それは、破滅に随うものだった。
そう、破滅がこの世に降り立ったのだ。もう、おしまいだ。
惜しい!
設定には想像力を掻き立てられるんだけど、小綺麗にまとめ過ぎたかも。
例えるならば、確かにおいしい料理だけど、ちょっと食い足りないかなあという食後間なんすわ。
なんかもっと熱量が欲しい。方向はダークでもいいから突っ走るか意外性で勝負するかなんでもいい、そういうの期待するなり。
またよろしくです。
講評有難うございます。
熱量、ほんと課題だなぁと思っているところです…頑張ります。
なんかもっと描写をくどくしたりとか、もっとゾッとする設定つけるとかした方が良かったかな?と思ったりしました。
異世界に転生した。
とはいえ、儂が元々暮らしてたのは江戸幕府。異世界の概念すら一般に広まっていないし、もちろん異世界ファンタジーもNAROU系も存在しない。
が、儂は気が付いたら異世界に転生しておった。
しかも、儂の死後に語られる儂の漫遊記(後世の創作)や、何百年も先の未来で流行っている物語の知識を与えられて。
なるほど、チートか。ハーレムか。
草原スタートであったが、街の位置はなんとなくわかり、その道中で魔物に襲われている商人にも貴族令嬢にも出会わなかったため、門兵との会話イベントの後はギルドに居た。
※ギルド 異世界において必ず行くべき便利なところ
「あら、いらっしゃい。身分証は仮なのね。じゃあここで魔紋登録して、正式な身分証明書を作るのが目的かしら? それとも冒険者として活動するつもり?」
眼鏡の似合うギルド嬢に、
「冒険者として活動したいので、基本的な説明などもお願いできるか?」
と掛け合う。
ちょうど、昼時で、空いていた時間だったのもあったのだろう。
ギルド嬢は丁寧に説明してくれた。
登録するとルーキーという階級が与えられる。そこで、なんでもいいから実績を積めば、Fランク冒険者となれる。そこから先はランクに応じてクエストをこなしたり、昇格試験を受けたりと。Sランクが最高で、ただしここ何百年かの間はSランクの冒険者は誕生していないらしい。
Sランクの昇格条件が、『国や世界の存続が危ぶまれる事態の解決』なので、まあ世界は平和じゃったのだろう。Aランクはポツポツと何十年かおきぐらいには誕生しているらしい。
そこそこ高貴な身分の生まれであったから、一人で冒険(まずはお手伝いレベルの簡単な仕事から、安全な場所での採取クエスト、弱い魔物の討伐とステップアップ)するのは、多少面倒でもあり、それ以上に新鮮で楽しくもあった。
冒険者というのは、自由で自身の能力次第では時間にも縛られない。
例えば、冒険者になって1か月後の儂であれば、半日魔物を狩れば1週間分の最低限の生活費が稼げるというような状況である。もちろんチートあってのことだ。
だが、そういう生活、週に1日2日ほどは魔物を狩って、それ以外では魔術研究やそれ以外の趣味に時間を使うという生活をギルドに把握されると、如何せんギルドから頼られるようになってしまう。指名依頼という奴じゃ。
儂ぐらいしか倒せない魔物の討伐から始まって。
Bランク冒険者と連携して魔物暴走を食い止めたり。
何故か復活した魔族と対決することになったり。
魔物に乗っ取られた領土を取り返したり。
一人でもなんとかなるぐらいの案件であったが、ギルド側の推薦で、他の冒険者と共にいくつもの依頼をこなしていった。
「ご隠居~、そろそろ休みましょうや! ちょうどいい茶店がありますよ!」
こいつは、うっかりものではあるし、何の役にも立たないが、何故かついてきてる奴。
「ハチの食い意地にも困ったもんだ」
そう言うのは、格闘に秀でたやつ。
「まあ先を急ぐ旅でもありませんし」
いまいちよくわからない剣士。
「ご隠居。今から向かう領地の貴族についての情報ですが……」
「商業ギルドと領主が癒着し……」
「領民の生活を苦しめているようです」
諜報能力に長けた忍者的なキャラ被りの男2、女1。
一応それぞれの中では役割分担は出来ているらしい。
というような、仲間たちと共にだらだらと異世界を練り歩く生活に行きついた。
儂もいい年ではあるし、何故かタイミングよく湧いた魔王を倒してSランクを飛び越えてMランクの冒険者になったので、それを機にギルドからの依頼は止めて貰って、言われるとおりに隠居暮らしである。
まあ、よっぽどの窮地になればギルドから連絡は来るのだろうが。
とはいえ、従者たちのレベルも上がりきっているので儂の出番はないじゃろう。
実際のところは儂が圧倒的に強く、最強 of the 最強ではあるのであるが、儂の力を発揮する場面はそうそうない。
魔王ですら、多分従者たちで倒せるであろうし、その辺の貴族ぐらいであれば……
「控えろ! 控えおろう!」
儂の魔力紋が刻まれたギルドカードを見せれば一発で膝まづく。
S(スーパーともスペシャルとも)ランクのさらにその先。
M(ミラクルと言われているが、水戸でも光圀でもある)ランクのカードに逆らえるやつなどいないのじゃから。
歴史は繰り返すというが……、
いや厳密には繰り返しではなく、後世のフィックションをなぞっているだけなのじゃが。
この世界では既に『ミツクニ・ミトの漫遊記』とかいう出版物が広まり始めておるらしい。
なお、そのバリエーションは豊富にあって、儂の従者が主人公になってるやつのほうが人気があるらしい。
儂がメインのやつは、うっかりにすら及ばないとか。
まあ、儂主体のやつは健全路線が多く、うっかりはカップリング相手が多種多様で人気があるということらしのではあるが。
ハチ×ミトがブームになりかけた時にはありとあらゆる人脈使って全力で阻止したし。
『涙がこぼれて、こぼれて、こぼれて』
最初、7年というのは長い長い年月のように感じられた。
実際にそれは長い年月だった。
だけど未熟な私たちには、その時間が必要だということの裏返しでもあった。
同時に、7年もあればふたりには十分だろう、という周囲の見計らいでもあった。
彼の名前はリン、と言った。
リンは私の父の父ほどの代から、私の家系に関わりがあるらしかった。同時に彼はたった13歳の少年だった。
「みずほ、」
彼は私のことを、馴れ馴れしくもそう呼んだ。私よりも年下のくせに。
「あのときはみずほがオレのことをエスコートしてくれるって言ってたけどさ、やっぱそのときはさ、オレがエスコートしてあげるよ」
彼はそう言った。エスコートが何なのか、どうせ彼はろくに分かっていないに違いなかった。
けれど、約束の時が来て、彼が大人になったとき、もしかしたら本当にそうしてくれるのかもしれない、と少しだけ思ってもいた。
そうだったらよかった。
あれは恋の病だった。
* *
父は、設計図を破り捨てた。
「お父さん、どうしてそんなことを」
私は言った。
「ならぬ、このような醜悪な建築物は、みずほには相応しくないに決まっている」
「そんな、」
「もう別の建築家を招いてある。天然の温もりを感じられる素晴らしい建築物になることだろう」
父は扉を閉めて出て行った。あの設計図は破られてしまったのに、私の設計図は微に入り細に入り線が引かれて、破られるような余地がない。
* *
「盗作?」
私は父に尋ねた。父は眉一つ動かさずに言った。
「ああ。だがもう別のデザイナーを動かしてある」
「そう、なの……ねぇお父さん、私は別に」
「みずほは心配しなくていい。代わりはいくらでもあるからな。父さんにとって代わりがないのは、お前だけだ」
そう言ってもらえるのはうれしい。うれしいけれども。
* *
「ねぇお父さん、私のために日本中から人を集めたりしてないよね」
「人聞きが悪い。お前を祝うために人々が東京に来ると言っているのだ。それを止める道理もない」
「その人たちは、みんな本当に自分の意志で来ているの?」
「来ると言っているのだから当然だ」
「呼び出されている人もいると聞いたけど」
「随分耳ざといのだな。この話はもう終わりだ」
「お父さん、」
ここのところ何から何までこの調子。
* *
過去のことばかりを思い出している。
去年のことは、正直なところあまり覚えていない。約束の時が来て、13歳の少年は20歳になった。
しかし、約束が果たされることはなかった。
1年の延期。
既定のこととして、それだけが私の元に告げられた。私は泣いた。同時に仕方のないことだとも思った。この流行病の中で、リンくんを危険に晒すわけにはどうしてもいかなかった。
それは虫のいい話だと分かっていた。だけど、どうすることもできない。
それからまた1年が過ぎて、2021年の初夏になった。
リンくんは21歳になっていた。
「ねぇ、リンくん」
電話をし始めたときから、私はすでに泣いていた。
リンくんはずっと黙っていた。
私は話しながら、この8年間のことを思い出していた。
最初はこれ以上ない幸せが訪れるものだと信じて疑わなかった。
2016年に遠くの国で開催があったとき、そのエンディングで私たちのことについて触れられたとき、世界中の人たちがくれた喝采を眼前に思い出す。
いつしか私たちの話は、私たちだけの話ではなくなっていた。
私が身動きを取れなくなったのと同じように、リンくんも一人では身動きが取れなくなってしまっていた。
競技場のことも、エンブレムのことも、折悪く広がってしまった流行り病のことも、全部私たちのせいというわけではないのだ。ないのに。
ないのに、こんなに報われない。
過去に戻ることはできない。未来のことは分からない。
それなら未来が少しでもよくなるように、いまを生きていくしかないのに。
なんとか呼吸を整えて、もう一度私は言った。
「ねぇ、リンくん」
“おもてなし”だなんて言って、おどける余裕があったころの、昔の私たちを思い起こす。
「エスコートしてあげるって思った、あのときの気持ちは、嘘じゃなかったよ」
リンくんは、オレも、って言ったような気がする。
「嘘じゃなかったし、それに、今も嘘じゃない」
世の中には、言ってしまったらもう戻れない境界線というものがある。
「会いたいよ。だけど、」
今、私たちは、その境界線を、
「ごめん。本当にごめん。今の私、」
超えた。
「私、やっぱり、リンくんのこと、エスコートできない」
涙がこぼれて、こぼれて、こぼれて、もう話すことができない。
おじさんがヤマにしばかれに行ってるのでおまちください。
そうすなあ。
お題の消化具合が、もちっとハマれば高得点狙えたかなー、という気はします。
個々のエピソードも切り口はすごくいいのに、書き急いでしまったか。
つまり、もっと書いてみたらいいのに。
っていう意味です。
『キュウにてにぬがかきたくなった』
大阪ハルは小柄で相手を翻弄するタイプのプレイヤー。
対して、新宿アケミはパワーファイター。
ある意味では、この両極ともいえる二人、それぞれの道の頂点を極めつつある者同士が決勝で当たるのは必然であっただろう。
「無制限一本勝負初め!!」
準決勝までは15分三本勝負で行われるが、決勝戦に至っては一本勝負。
三本勝負にしたところで、お互い一本目で全力を尽くして次のセットには進めない。この試合形式もある意味では必然であった。
サーブ権は、アケミ。
「これで決めるワ! ダイダルウェーブ!!」
アケミがラケットを振りかざすと、コートの中を大津波が荒れ狂う。
「く! 腕を上げたな!」
が、ハルは初手ダイダルウェーブを完全に読んでいた。
なんなら、津波に紛れて、ロボットシャークが己の四肢を食いちぎらんと襲い掛かってくることすら。
「operation-Code:N」
ハルは機械鮫の指揮権を奪う。もちろん、こんなガラクタでアケミに致命傷を与えられるわけはない。
が、サーブ権を奪うことに成功した。
「会場にはまだCode:Nの余波が漂っている!」
「来るな! 大阪の必殺サーブ……」
観客は、この後の展開を予測しているようだ。
そう、詰めろとも例えられるハルの必勝戦術。
場を自身の支配波動で満たしたうえで発動する、最強のサーブ。
「くらえ! <Εὐκλείδηςとダンスを>!」
準々決勝までは封印し、準々決勝以降の数々のプレイヤーを葬ってきた必殺サーブだ。
「馬鹿のひとつ覚えとはこのことネ!」
アケミがラケットを振るうと、竜巻が巻き起こる。
「な! アケミも時空操作を……」
「なるほど、準決勝での土佐戦。鍛えた筋肉だけであの結果になるとはさすがにおかしいと思っていたが……」
「あれほどの逸材だ。師匠であるアレクサンドロスが時空操作を、いや次元操作を教えぬわけがない」
「まさか、アケミが次元操作を」
「ハルに勝ち目なんてあるのか!?」
「どちらにせよ、次のサーブで全てが決まるようだ」
ポイントは1-1。
サーブ権は再びアケミに。
そこからは、お互いに相手の様子をうかがうような大人しいプレイが続く。
「おいおい、ハルのマッチポイントだぞ。まさか、このまま勝っちまうのか!」
「いや、アケミはこの瞬間を待っていたようだ」
「そうか! いくらアレクの教えがあるとはいえ、Code:Nの影響下にあるこのコートでは……」
「そう、時空はともかく、次元干渉はできない。出来たとしても、その威力は到底期待どおりにはならない」
「くそう! 汚ねえぞ! ハル~!! 駄目だ! アケミにサーブ権を渡しちゃあ!!」
が、ハルのマッチポイントのまま、サーブ権はアケミに移った。
「こちらではなんていうんでしたでしょう? そうそう、年貢の納め時って言うんでしたっけ!」
言うが早いが、アケミは無情にもサーブを放つ。
アケミの姿が揺らぎ……。
「ハルの背後にアケミが!」
「瞬間移動か!?」
「いや、元の場所にもアケミが……」
「違う! 二人だけじゃない! 4人、いや8人?」
「32人だな」
「そうでしょう。常人に観測できるのはそこまで」
「あんたはアレクサンドラ!」
「アケミは私を超えました。メガを超え、テラを超え、エクサに辿り着いた私を」
「まさか、ゼタ?」
「いえ、その向こう側ですよ」
「そんなバカな……それこそ……」
「ふふ、与太話だと思いますか?」
とにかく、10の24乗以上のアケミだ。
ハルにはどうすることも……。
「わかっていたさ! 最後はこれで決めに来るってことを。
その為の撒き餌! その為のオペレーション:N」
「ア、アケミの力場が……消滅していく……」
アレクサンドリアの驚愕。
それもそのはず。
コートに残っていたのは、ハルのみであった。
「駄目だ……。敵う訳がない……。コートが……いや、世界が、世界がハルに……エヌに飲み込まれていく……」
「行くんだ!振り向くな!まっすぐ進むんだ!」
背中を押す力が強すぎて、つんのめりそうになりながら走り始めた私を、言葉がさらに押す。
夜中に背中にかけてくれたコートが脱げないように、袖を通しながら。
振り向くなって言ってたから、振り向かない。
何か、大きな音が後でした。
振り向くな。
まっすぐ前を向くんだ。
心に声が響く。
爆風や衝撃音が近い。
足元がくずれ
「大丈夫ですか」
の声にハッとする。
ヘリコプターの音が聞こえる。
「救助ヘリの中ですよ。間に合ってよかった」
「あの、軍曹は」
若い兵士は、目を閉じて首を振った。
そして、コートの袖を見ながらこう言った。
「この最新のコートのおかげですよ。防弾・耐衝撃・視認性減少・超軽量・位置情報発信、全部装備されてますからね」
「え、軍曹の着てたコートを掛けてくれたんだと思って」
「ちゃんと、あなたのサイズですよ。特注品を戦場に届けろって、軍曹の注文が入ってました」
襟の後ろのサイズ表記は、Sだった。
戦場でエスコートしてくれた軍曹がくれたSコートがエスコート(護衛)してくれたんだ。
この程度で投稿すると怒られるのを覚悟して投稿。あとで修正できればするけど…
どこに落ちたい?
待ち合わせに少し遅れて来た彼女は、かなり手前で立ち止まり、くるりと一回転してみせた。
大きいな、と僕は思ったが、それが誉め言葉かどうか怪しかったので、
「見たことないよ。新鮮だ」
と感想を述べた。
「でしょ。このワンピ、今日はじめてよ」
衣装よりもサイズが斬新なのだが、おろしたての服で来てくれたのだから、せいいっぱい誉めておく。よく似合っているし、可愛い。
彼女の全長はざっと10メートル、いや15メートルくらいだろうか。その姿は水の幕に投影した映像のようだ。輪郭は曖昧で、ぼんやりしているかと思うと不意に強く輝く。
構成因子は均一ではなく、大きさの異なる粒や限りなく薄い切片が舞い上がっては舞い降り、複雑な軌跡を描きながら光を弾いている。
どうやって映像を投射しているのか気になるが、解析しだすと彼女のご機嫌を損なう。間違いなく覿面にばれるのだ。考えるのは後回しにしたほうがいい。
僕は近辺で行けそうな場所をすばやく思いめぐらし、少し歩くけれど展望公園に行かないかと提案した。
遠回りになるが、架線が埋設された遊歩道を選び、彼女が街灯や街路樹に触れないよう気を配る。おそらく物にぶつかっても大丈夫なのだろうが、万が一にでも彼女が破損するのは見たくない。
ワンピースの裾をひらめかせながら、彼女はゆったりと歩みを進める。いつまで見ても見飽きない美しさだ。
この次に会うときはまた思いもかけぬ姿でやってくるだろう。今回限りのこの姿をできるだけ長く眺めていたいと思う。
けれど、等身大で実体化してくれなければ手を繋げないってことに気づいてほしくもある。
ぶっちゃけ言いますと彼女が何者なのかがよくわからんのです。どうしても名駅前のナナちゃんを想像してしまって…すみません。
あんまり説明くさくするのも興ざめではありますが。もうひと工夫あるといいのかも。
講評ありがとうございます。
いったんは細々と説明してたのですが、長いわりに面白くなくてざっくり削ってしまいました。ちょっと削りすぎでしたね。
ナナちゃんは身長6メートル。《彼女》はその倍、電柱くらいの高さです。作話しながら電柱を見上げては《彼女》の姿を妄想してました。楽しかったです。
一番乗りありがとうございます。
一番乗りポイント3点差し上げます。
そんなあなたにWチャンス!
今なら補足記載のリンク先をお読みの上、ご意見をいただきますと内容により追加ポイント差し上げるかもしれません。