●プロローグ
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《 今夜10時に 誰かが死ぬ 》
大財閥・八神家の館に届けられた一通の不吉な予告状。
探偵キサラギは、この謎を調査して殺人予告を阻止するため、助手のミハルと共に山中の洋館へと招待された。
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いわし質問を使った即興劇です。以下の設定を踏まえてキャラクターになったつもりで回答してください。
・ルール/キャラクター設定などはこちらを参照してください。→http://d.hatena.ne.jp/castle/20061031/p1
この質問は、lionfanさんのhttp://q.hatena.ne.jp/1161700535企画により立てられました。ありがとうございます。
――それは、大きな振動となって聞こえてきた。
「し……き……けて」
必死な様子で死体から何かが伝わってくる。振動する頭蓋に阻まれて、ほとんどノイズのようにしか聞こえない。キサラギは必死に聞き取ろうとしたが、暗闇に阻まれるかのように、その音はかき消えていった。
だめだ。
キサラギはまぶたを見開いた。眼前には、ミハルのきょとんとした顔があった。
「なに震えてたの? あ、キサもしかして怖い?」
やっと頭蓋の振動が止まると、キサラギはミハルを放っておいて、ゆっくりと立ち上がった。そして、暗い面持ちのままうつむき、おびえる夕南に対して、何事もなかったかのようにこういった。
「夕南さん、申し訳ないが今すぐに、この家に関わっている人間を全て呼んでくれ」
夕南が静かにうなずき、その場から立ち去ろうとした瞬間、キサラギを最初に押しとどめた鑑識が素早く割って入った。
「困ります、この現場は立ち入り禁止です!」
この鑑識はおそらくこの現場の責任者なのだろう。キサラギは鑑識の胸をノックでもするかのように叩くと、
「なにもここに呼ぶとは言っていないだろ」
と言った。鑑識はそれを聞いて、またしても引き下がらざる得なかった。
屋敷の大理石の廊下はいつも手入れが行き届いていて、やたらに高い天井の光を映し出している。すこし先には豪勢な琥珀色の階段があり、それは左右に配置され、キサラギ達を待ちかまえているかのようだった。
キサラギは先ほどのやりとりから、すぐに全員を呼ぶのを一端保留にし、夕南に紹介されたメイド、詩織(しおり)に別室を案内してくれるように頼んだ。詩織は先頭に立って、キサラギとミハルを各所に案内し、説明して回る。簡単に言うと、屋敷の構造はこうだ。
一階は広いホテルのロビーのような空間があり、その中央には大理石の置物。ホールから続くいくつもの廊下の側面には、メイド達の寝室や、やたらに広い食堂、八神麗奈の書斎、客間などがあった。
二階に至る階段は正面の二箇所しかなく、そこを通らない限りは二階へは到達できない。だが、先ほど外から屋敷を拝見した限りでは、ベランダに何かを引っかけて上がる、あるいは、はしごなりを使って上がるのは十分に可能である。そう考えると、庭師のセンも一応頭の片隅に置いておくべきだろう。
階段を上がりきった正面に巨大なベランダが見えた。二階は八神麗奈の広大な、と言っても言い過ぎではない、寝付きの悪そうな寝室と、趣味の本を図書館並みに集めた部屋があった。あとは小さな小部屋がぽつぽつと点在した。小部屋はおそらく客室用だろうが、見せつけるだけ見せつけておいて、客には貧相な小部屋に泊まらせるとは、殺される理由も何となく伺えるというものだ。
「すまない、もう案内はいい、全員を招集できる場所を提供してくれ。できるだけ――そうだな、玄関から離れたところがいい」
それでは、と詩織は言い、二階の一番突き当たりにある小部屋を案内してくれた。詩織はお辞儀をして、重厚な扉を両手で閉めた。やがて、か細い腕が見えなくなる頃、キサラギは小部屋の窓辺に座り、まぶたを閉じた。
「さあ、おいで。犯人君」
キサラギの読みは当たった。やがて、遠くからいくつもの会話が聞こえてくる。屋敷の入り口へと向かって歩きながら、その声達は、キサラギに有益な情報をもたらすとも知らずに。
「ああ、そう言うことらしいな」
野太い男の声が聞こえる。
「昨日、奥様は普段お召し上がりにならないお食事をされていたとか」
今度は、とても綺麗な男の声。少しナルシスト風のしゃべり口調だ。
お召し上がりにならない食事。
それが、なぜか耳に残った。
「奥様なんてよせ。あの女には安月給で警備を任されていたんだ」
やはり、人望は厚くなかったようだ。キサラギはさらに耳を澄ませた。
(殺人鬼の内面描写、キサラギが聴くことのできる囁きなどは、こちらのツリーにお願いします)